村上春樹氏といえば毎年ノーベル文学賞最有力と言われながら受賞までなかなかいかずヤキモキしてるファンも多い事でしょう。
独特の文体で氏の熱狂的なファンの事をハルキストと呼ぶそうです。
僕の場合ハルキストほどではないのですが「風の歌を聴け」以来35年ぶりに村上氏の小説を拝読いたしました。
村上氏の短編小説「納屋を焼く」が韓国の名匠イ・チャンドン監督の最新作である「バーニング」という映画の原作となっているからです。
イ・チャンドン監督といえば発表するごとに波紋を呼ぶ傑作ばかりで毎回、大注目しております。
作風が最近のハリウッドかぶれ韓流ではなく成瀬己喜男監督作を彷彿させるような深みと暗示を表しているからですが村上氏の小説をどのように映画化するか期待が膨らみました。
感想は毎度のように「何が何だかよく解らんが凄い!」の一言に尽きます。
「納屋を焼く」は言葉通り短い小説なのでシチュエーションだけ借りた半原作みたいな感じですが、この短編集に同時に掲載されている「蛍」という短編の1シーンをそのまま引用している所がポイントです。
主人公女性がパントマイムで無い蜜柑を向いて食べるシーンなのですが、この時のセリフが意味深なんです。
「無いものを有ると思いこまないで、無いという事実を忘れる事が大事」
これを秘訣にするとこの「バーニング」という異色の傑作をより楽しめるかと思います。